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◆第1番 魔術師◆

修業※注

社会的役割

1番魔術師

※注:修業
ここでは修業(しゅうぎょう)としておりますが、修行とは意味合いが異なりますので、注釈を付します。修行(しゅぎょう)とは、利害損失を離れ、悟りを求めて仏の教えを実践することを言います。修行は終わりのない行です。他方、修業とは、一定の業を修めることで基準に達すれば「卒業」となり、自分の利益のために学問や技芸を習い修めることを言います。第一番「魔術師」のカードの象徴は、社会的役割としての修業の方が近い意味と言えます。

◆キーワード

《正位置》

社会的活動、仕事、新しい環境、創意工夫、軽業、芸術、見習い、若い、徒弟、青年

《逆位置》

未熟、ごまかし、人前に出られない、不慣れ、満たされない承認欲求、社会貢献しない、能力が生かせない

◆魔術師の象徴

若い青年が野外で屋台の上に様々な道具を並べています。LE BATELEURというのは、フランス語で軽業師(かるわざし)という意味ですが、軽業師とは人前でアクロバティックな技を演じる芸人のことです。つまりこのカードの青年はカップの中に玉を入れてそれを伏せ、見物人にその玉のありかを当てさせて惑わせる手品をしている最中なのです。しかしこの青年は手元を見ずになぜか左側を見ています。左側に手品の師匠がいて、その師匠の目を気にしているのでしょうか。あるいは過去の経験やマニュアルなどを参照しているのかもしれません。

若い男性は積極的、行動的、活動的であることを示しています。これから人々の前に出て自分の技を披露しようとしているのですから、堂々とした態度が求められます。帽子がこれ見よがしに大きいのも、自分をアピールする自信の表れかもしれません。あるいは逆に、自信がないからこそ衣装を派手にしてごまかしている可能性もあります。とはいえ、その帽子は無限大のような形をしており、青年の頭の中ではこの仕事に無限の可能性を見出しているのでしょう。

手には玉とバトンを持っています。玉をカップの中に入れて、バトンでそのカップを打って客の注意を向けるのです。この玉とバトンは陰陽の象徴であり、彼は陰陽の使い手でもあります。人を騙すためには様々な道具が必要です。ナイフ(剣)は風、カップ(杯)は水、コイン(玉)は地を象徴しており、それらを収納する水色の袋は空(くう:エーテル)を表しています。つまり彼はこの世の物質の構成要素である陰陽五行を駆使して、物を生み出し、あるいは消し去るという技を披露しているのです。それは単なる手品ではなく、一種の魔術であることを示しています。

屋台の上には他にも三つのサイコロが置かれています。サイコロの出目の数は1と2と4です。それを合計すると7であり、7の目のサイコロが3つあるので21という数字を象徴しています。その数字は、数字のない愚者を除いた大アルカナの数そのものでもあります。

道具を置いている屋台の足は4本のはずですが、3本しか見えません。残りの一本はどこにいってしまったのでしょうか。これは第四のものは常に隠されるという秘教の原理を示しています。あらゆる教えには三位一体という象徴がありますが、隠された四つ目があるのかもしれません。

また、青年の足はしっかりと左右に開かれていますが、これはどちらにでも重心を傾けることができるという体勢です。起こる出来事に対して柔軟に対応しようとする心の表れなのでしょう。

ところで、この青年の足下の背景には不自然に描かれた草の芽があります。この草の芽の左には7本、右に8本の毛が生えており、78という数字を象徴しています。これはタロットカードの大アルカナと小アルカナの両方を加えた総数を示しており、この草の芽が全体を表す象徴であるということを示しています。この草の芽はそれが「在る」と見ると、ただの草の芽にしか見せませんが、背景としてそこが「無い(穴)」とみると、女陰のようにも見えます。つまり、この青年は背景である世界の女陰から産み出された青年であるかもしれないということを示しています。つまり、世界から産み出されたアダム(人類の元型)が、社会に出て社会とは何であるのかを体験する第一歩を踏み出したのです。

このカードを実際にリーディングするときに注意したいのは、このカードが社会的役割を意味しているということです。私たちは社会で生きていくためには何らかの仕事をしなければなりません。仕事というのは、もちろん社会的に人々の役に立つという要素もありますが、商売として考えたときには、いくらか人を騙すという要素も含まれます。モノの価値の通りに販売していたのでは、利益を生み出さないため、モノの価値以上に人々を魅了してお金を得なければなりません。その技術というのは、社会的な先輩から後輩へと受け継がれてゆきます。仕事というのは、人の役に立つという面(利他)と人を魅了してお金を得る(自利)という両面があります。その矛盾した両面のバランス(中庸)を学ぶということが、社会で働くということの最大の目的と言えます。

カードの名称が魔術師とされているのは、一般的な仕事、ビジネス、商売というものも、ある種の手品であり、人々を魅了するという意味においては魔術と言えます。  人が社会で学ぶ第一歩は仕事です。そして仕事は手品でもあり、魔術でもあります。そこではきれい事だけではままならないこともあります。その仕事の場で何を学ぶのかが、人としての第一歩であるとカードは教えています。

カードの名称が魔術師である理由は、人が本格的な精神修行に赴く前には、物事を自分の思い通りにするような魔術やサイキックというものに心惹かれるものです。そのような魔術やサイキックは、精神においてはまだ未成熟な状態であり、それは真理探究の入り口に過ぎないということをこのカードは示しています。その意味において、第一番「魔術師」のカードの象徴は、修行ではなく修業なのです。

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