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◆第17番 星(星辰)◆
希望
献身
◆キーワード
《正位置》
希望、献身、寛容、愛情を注ぐ、心血を注ぐ、理想、柔軟性、無限の可能性、自然との調和、宇宙と繋がる、ヒーリング、孕む、妊娠、理想の女性、愛そのもの、女神
《逆位置》
希望が叶わない、希望が持てない、高慢、自己卑下、寛容過ぎる、理想が崩れる、釣り合わない恋愛、異性の欠点が気になる、理想を下げる必要性、期待が強過ぎる
◆星の象徴
両手に水瓶を持つ女性が跪いて水を注いでいるように見えます。ところが、一方の瓶には太陽の象徴があり、もう一方の瓶には月の象徴があることから彼女は単なる水を注いでいるのではなく、陰陽の異なるエネルギーを注いでいるということが分かります。
彼女が跪く足元には川が流れていますが、陰陽のエネルギーを注いでいるのは通常の川ではなく、過去から未来へと注ぐ時の流れを表しています。
彼女の頭上には中央に大きな星とその周囲に七つの星が輝いています。中央の星の周囲を守護するように星が回っていることから、これらの星々は北極星と北斗七星であることが推測できます。
17番のカードの名は「星」ですが、正確には「星辰」であるかもしれません。「星辰」とは、時間の経過につれて動く天体のことであり、天の意図は星の動きに表れます。この女性は天体の動きを正確に読み取ってこの地上に降ろしているのです。そういう意味では、彼女自身が天の意図を表しているとも言えます。
北極星は地球から見て唯一動かない星であり、宇宙を統べる天帝の星とされています。彼女は北極星の加護を受けており、神の種を得て妊娠しているのです。彼女は古代から伝わる神の子を宿した聖母として陰陽のエネルギーを献身的に注いでいるのでしょう。
また、彼女の額には月のマークがあることから彼女自身は月の女神であるようです。ということは、頭上の星と彼女自身の月の象徴から、彼女のお腹に宿っている神の子は太陽神なのでしょう。なぜなら、太陽と星(北極星)と月は、勇気・智慧・愛の象徴であり、三位一体となって初めてこの世に顕現することができるからです。勇気と智慧と愛の一体化は人類にとっての希望であり、理想でもあります。人は勇気と智慧と愛の三位一体によって宇宙と調和し、永遠の命を得ることができるからです。
この女性が裸であるのは、ここが禊の場だからなのでしょう。神の子を宿した女性は、自分自身を清めるために禊を行います。キリスト教においても洗礼を行いますが、それは一切の穢れを水によって清めるためです。彼女は禊をすることで神と一体化しますが、驕り高ぶることはないようです。彼女は跪き、ひたすら与えることだけに集中しています。彼女のその姿勢は、全ての行動が献身的であり、嘘や隠し事なく純粋であることを証明しています。愛はただひたすら献身的に注がれることによってのみ表現されるものであることを彼女は体現しています。彼女は無限の愛を注ぎ続けることで、自ら女神へと昇華させているのです。
彼女が陰陽のエネルギーを注ぐその場所は一体どこでしょうか。彼女の背後には二本の木があります。右側の木には実が成っていませんが、左側の木には実が成り、鳥が止まっています。日本においても鳥居の向こう側は聖域とされていますが、彼女は聖域に入るための禊をしているのですから、彼女の背後の二本の木の向こう側はまさに聖域なのです。
その二本の木は聖書に描かれたエデンの園の中央にあるとされる善悪の知識の木と生命の木を表しています。彼女は愛に奉仕することで、ついに神の創造したエデンの園に帰還したのです。エデンの園の生命の木の実を取って食べると、人間は神の如くとなるとされています。彼女はその二本の木の真ん中におり、愛を与えることで生命の木の実を得る可能性があるようです。しかし両方の木の幹の下には、赤い蛇が口を開けて待っています。やはりエデンの園の中央の木の実を食べるには、相応の試練があるようです。しかし彼女の周囲の自然に溢れた景色から、その実が豊穣と繁栄と永遠の生命の象徴であることは間違いないようです。それは人間が憧れ続けた永続する幸福の象徴でもあります。
彼女のお腹の中には16番の神殿で受胎した神の子が徐々に大きくなりつつあります。下腹部のへそが唇のように見えるのは、そのお腹の子が言葉を話すことを象徴しています。
胎内の神の子が成長するまで彼女は神の子の代弁者(巫女)として活動しているのでしょう。彼女はお腹の子が自分の中から出て、大きくなることを心待ちにしているようです。理想の現実化は彼女の献身的な愛の体現にかかっているようです。
理想が現実化し、希望が大きくなればなるほど、献身的な態度でいることが大事であることをこのカードは示しています。希望と理想は愛を注ぐ(与える)ことによってのみ実現可能なのです。
◆ペアカード
第2番 斎王:妊娠、母性
第12番 逆さ吊り:二本の木の間
第14番 節制:二つの水瓶
第18番 月:月の象徴
◆第18番 月◆
葛藤
執着を手放す
◆キーワード
《正位置》
幻影を打破する、執着を切る、不安の解消、悩みの解消、情念を払拭する、葛藤を乗り越える、陰気を脱する、思い込みに気づく、感情の問題、母性、出産、月のリズム、時間、ペット
《逆位置》
幻影を信じる、思い過ごし、執着する、不安を解消できない、本能的な行動、濡れ衣、感情におぼれる、盲目的、過干渉、漠然とした不安、不安定な感情、慈愛の欠如
◆月の象徴
空には赤く染まった月が浮かんでします。満月に神の横顔が映し出されて三日月となっていることから、この月は満月の日に地球の影が月にかかって見える月食の月であるようです。
この月食によって、情緒不安定になった二匹の犬が月夜に向かって吠えています。犬の象徴は人間の感情や潜在意識と関係があります。一匹の犬は青色で、もう一匹は肌色をしていますが、双方に耳の色が入れ替わっていることから、この二匹の犬は矛盾する感情を表しており、相争う葛藤を象徴しています。
犬は主人を必要としますが、神の子の出現を望む神聖な犬と自分の欲望を叶えたい獣性の犬とが互いに吠え合っています。相争う二匹の犬の先には左右に城壁のある門があり、その二匹の犬(感情)の葛藤を超えた先に、楽園があるかのように示唆されています。楽園へ至るには、神聖な願望と肉体の欲望の葛藤を克服しなければならないのでしょう。
二匹の犬の手前には、人工的に見える四角く囲まれた池があり、その池の中には巨大なザリガニが浮かび上がっています。四角はこの物質世界を表しています。甲殻類のザリガニは、月の満ち欠けに影響を受けて卵を生むとされています。また、近年では単為生殖によってメスだけで繁殖するザリガニが発見されています。このザリガニは肉体の生殖によらずに神の子を宿した聖母の象徴であるのでしょう。聖母はこの物質世界で有性生殖によって子孫を残すのではなく、神霊との子を産む決心をしたのです。聖母の象徴であるこのザリガニはハサミに卵を挟んでいます。葛藤の末にどちらの子供が生まれるのかを待っているのかもしれません。
単為生殖のザリガニが卵を産み、子孫を残すためには、さざ波のない鏡のような水面である必要があるようです。目標を成し遂げるためには、葛藤を乗り越え、明鏡止水の心境である必要があるということなのでしょう。
霊と肉の葛藤を超えた先に楽園があるということをこのカードは示しています。青色の霊の犬が少し高い位置にいることから、葛藤を乗り越えるには、霊性を高く掲げ、肉の欲を低くすることによって達成されると暗示されています。何事も目的を達するためには葛藤のない心が必要であり、精神が統一された状態でなければ進むことはできないのです。
◆ペアカード
第2番 斎王:母性
第15番 悪魔:執着・カルマ・幻想、幻影
第17番 星:母性、妊娠、天体
第19番 太陽:天体