第七回の講座で使用するテキストです。このページの最下部にPDFをダウンロードするボタンがあります。必要な方はご利用ください。
◆第10番 運命の輪◆
展開
共時性現象(現象の変化)を読み取る
七元徳:希望(対神徳)
◆キーワード
《正位置》
展開、新しい変化、人生の変容、時間、共時性現象、運命、遭遇、突然舞い込む幸運、チャンス、タイミング、時流の変化、パラダイムシフト、無為自然、昇進、転職、転機、
《逆位置》
時間がかかる、タイミングが合わない、チャンスを逃す、運命の暗転、すれ違い、業績暗転、時流に流される、心変わり、金回りが悪くなる、リズムが狂う、内的な声に従わない、二極化、
◆運命の輪の象徴
大きな時の流れという川に浮かぶ運命の車輪。車輪は水の上に浮いているので、運命が劇的に揺れ動くことを示しているのでしょう。六本のスポークを有する車輪は陰陽和合の六芒星を暗示しているのかもしれません。
その車輪の外側にしがみついているのは、三匹の獣です。車輪の左側には、人肌をした猿が下降する流れの中にあります。人肌の猿は今までの人類を象徴的に表しており、ボスザルが猿山の王となって他の猿を支配するような社会の終焉を示しています。他方、右側の獣は犬です。愚者に付き従っていた青い犬が、今は黄色の犬となって上昇しようとしています。猿は自分が主ですが、犬は共に旅をする飼い主である主がいることを知っています。
この犬が目指すのは、獣の頂点とされるスフィンクスなのでしょう。このスフィンクスは四元素である地(黄)、水(緑)、火(赤)、風(青)を司っています。東洋の五行思想でも黄色は中央の色を表しており、黄色の犬は大地の支配者にして中央の座に座する運命にあることを表しています。ちなみに、エジプト神話のオシリスには犬の使者がいるとされています。
この二匹の獣は、これからの人類の運命を暗示しているのです。つまり、自分が主となろうとする猿よりも、自分の他に主がいると悟っている犬の方が未来に上昇する運命なのです。日本にも非常に仲の悪い例えとして「犬猿の仲」という諺がありますが、この両者の向かう先が相入れないことを示しているのかもしれません。そして、犬が向かう方向は人類の希望でもあります。ゆえに、運命の輪は七元徳の「希望」を象徴しています。
ところで、この黄色い犬には獣としての耳以外に、人間と同じように顔の側面にも耳があります。これは神の声を聞くことができる霊耳であり、神の僕として進化した耳なのです。新しい人類の象徴でもあります。
この犬が目指すスフィンクスは、エジプト神話やギリシア神話などに登場し、第21番の「世界」のカードに描かれた天使、鷲、牡牛、獅子の合体型なのです。元々のスフィンクスは、子供をさらう怪物とされており、戦いにおいては死を司り、高い知性によって謎解きやゲームを好み、謎が解けなかった者を食べるような怪物だったとされています。しかしこのスフィンクスの謎を解いた存在は永遠の知性を得るという伝説もあり、エジプトでは王家のシンボルともされています。このスフィンクスの謎を解き、スフィンクスを従える者が真の王です。
日本の神社の狛犬も獅子と犬とされています。獣の王者である獅子でありながら、主人に仕える犬でもあるという心の状態に至ることで、社殿へと進むことができます。
ところで、運命の輪にはそれを回すクランク(手回しのハンドル)が付いています。運命の方向性を決め、その運命の輪のクランクを回すのは一体誰なのでしょうか。次のカードの「力」を示す女神なのでしょうか。運命の輪の右隣のカードの存在が運命の回し手となるようです。
この運命の輪のカードが示すのは、新しい運命の展開です。その運命の輪を回すのは誰なのか、それを決めるのは自分自身なのだということを示しているのでしょう。
◆ペアカード
第21番 世界:世界へと至る運命の展開と世界の完成
他の元徳を示すカード
◆第11番 力◆
奇跡
自己を超える
七元徳:勇気
◆キーワード
《正位置》
奇跡、吉兆、恩寵、時間、自己超越、人智を超えた力、無限の可能性、勇気、自己コントロール、童心、カリスマ、人望、少女
《逆位置》
奇跡が起きない、勇気がない、問題解決能力が不足している、獣性に打ち勝てない、凶兆、自信過剰、無気力、弱気、コントロールできない、活力がない、資金不足、人材不足、
◆力の象徴
現象界タロット曼荼羅のちょうど中央に位置している第11番 力のカードは、運命の輪の先にある新しい展開を示すカードです。女性が表情一つ変えずに獅子の口を押さえています。現実ではあり得ない様子であることから、これは奇跡であり、彼女は人智を超えた存在なのです。しかし、服装は中世ヨーロッパの一般的な庶民の衣服であるので、彼女は一般的な女性であることが示されています。
また、魔術師は魔術を行うのに杖などを使うのに対し、この女性は素手で獅子の口を開けていることから、彼女の「手」に魔術の神秘が宿っていることを示しています。
この獅子は、運命の輪の頂点に君臨していた獅子でもあり、犬でもあるスフィンクスなのでしょう。彼女はスフィンクスの謎解きに勝利した存在なのかもしれません。スフィンクスは、北緯30°上に正確に東西を向いて位置しており、獅子の体と人間の頭で獅子座から水瓶座のラインを示しているとされています。これは弱肉強食(競争社会)という獣のような社会から人間的で知性に溢れた時代へと移行することを象徴しているのかもしれません。
また、この獅子の足元は黄色、あるいは黄金に輝いており、足というよりは一角獣の角のようなものが見えています。この獅子は一角獣(ユニコーン)と表裏一体なのです。
獅子と一角獣といえば、イギリス王室の紋章となっておりますが、実は、日本の神社の狛犬も獅子と一角獣の対なのです。狛犬は実は一角獣(ユニコーン)なのです。獅子は王者としての威厳を、一角獣は仕える使者としての神性を表しており、この矛盾する両者を兼ね備えた者が、神という領域へ進めるのです。
彼女は獅子の口を抑えようとしているのか、あるいは開こうとしているのかはわかりません。しかし彼女がその王者と聖者の両方の素質を備えた存在であることは間違いありません。通常、若い女性がそのような素質を有するとは誰も想像しません。しかし本当の奇跡とは、この世界の常識を超えたところにあるようです。
神という存在は、矛盾するすべてのことを統合し、若さと智慧と力、そして王者と神性さを兼ね備えた存在なのだと推測できます。
彼女が人智を超えた存在であることは、彼女の足の指が示しています。よく見ると、彼女の足の指は六本あります。彼女は地水火風空という第五元素を超えたそれらを統括する意思そのものであり、彼女の力はその意思にあるのです。確かに、神という存在は意思そのもので世界を動かせる存在であるはずです。
また、彼女はレムニスケート(連珠形)の形をした帽子をかぶっています。これは無限∞の象徴であり、天と地の両方の価値観を意識していることを暗示しています。頭頂部に赤い三角の光が放射されているのは、彼女が天界のエネルギーを受けて思考し、表と裏が逆転しているメビウスの輪のような帽子のつばは、意識と無意識の両方の作用を彼女が活用して思考していることを表しています。
どうやら彼女が有している力は物理的な作用ではなく、意思という力であるようです。何事も最初に意思があります。矛盾のない統合された意思こそが本当の力なのだということをこのカードは示しているのでしょう。
◆ペアカード
第1番 魔術師:天界のエネルギーを受けていない思考と天界のネルギーを受けている思考 他の元徳を示すカード
◆第12番 逆さ吊り◆
修行
逆転の発想
七元徳:信仰(対神徳)
◆キーワード
《正位置》
修行、逆転の発想、別の観点、大局観、宇宙意識、自己犠牲、神性、忍従、広い視野、精神的成長、信仰心、信念、他者へ尽くす、愛への奉仕、
《逆位置》
無駄な犠牲、報われない努力、忍耐不足、困難な状態、八方塞がり、改善しない状態、停滞、働かない、引きこもり、頑固、こだわり、
◆逆さ吊りの象徴
男が枝に掛けられた木の棒に足を縛られ、後ろ手に縛られ、逆さに吊るされています。しかしよく見ると、ロープは木の棒にしっかりと括り付けられているわけではないようです。もしかすると、本当は後ろ手に縛られているわけではなく、手に持っているものを隠しているだけかもしれません。つまり、逆さとなっている男は物理的に逆さ吊りになっているのではなく、どうやら発想が逆転して逆さ吊りにされているようだと感じているだけのようです。
また彼の頭を避けるかのように大地に穴が空いています。彼の発想は物理的な制約を受けず、大地をも動かすのかもしれません。その証拠に、彼の上着のボタンは10個あり、これは生命の木の10個のセフィロトを表すとともに、太陽系の惑星をも表しています。ベルトのすぐ上の惑星が太陽であり、上着の裾から二番目が月、四角で表されているのが地球だとすると、彼の髪の毛に描かれた太陽と月は、現実の月ではなく、宇宙全体の生成消滅を生み出している陰陽の象徴としての太陽と月であることがわかります。これは陰陽和合の象徴です。この世の価値観は優劣、美醜、善悪などすべて二元的価値観ですが、彼がすでに二元的発想から脱したことを表しています。つまり、彼はこの世の価値観とは逆の発想によって悟りに至ったことを示しているのでしょう。彼の発想は宇宙的規模なのです。彼が目を開いてわずかに笑みを浮かべているのは、今までの価値観、常人とは異なる観点から物事を観察しているからなのでしょう。
彼は逆さに吊るされているかのようですが、両サイドの木の枝の節は揃っており、そこに横木を添えると梯子のようにもなります。彼は逆転の発想によって天への階段を登っているのです。このことから、このカードが逆さまであるのは、この世の価値観と逆の発想によってのみ昇天することが可能であるということを示しているのです。
また、彼の足は第4番の「皇帝」の足の形と第21番の「世界」の足の形と同じです。これは彼が皇帝でもあり、神でもある存在と等しい者であることを示しています。彼は悟りの境地を味わっているのかもしれません。この足の形は十字でもあり、卍ともされます。
十字や卍はエネルギーの源を示す象徴でもあり、彼は宇宙的生命エネルギーの源へアクセスする智慧を知ったのかもしれません。
木に逆さに吊るされた男は、北欧神話の最高神オーディンをモチーフにしているとされています。オーディンは、ルーン文字の秘密を得るために、ユグドラシルの木で首を吊り、九日九夜、自分を最高神オーディンに捧げたとされています。
この神話から彼は自分自身が最高神オーディンであることを悟った存在なのでしょう。なぜなら、自我が本当の自分である存在に我が身を捧げれば、神へと戻ることができるからです。自己犠牲こそが神性さへと戻る唯一の方法であることに彼は気づいたのです。自我の逆さが神であるという気づきによってのみ神聖さを取り戻すのです。それは自分の中の神性さを信じることでもあります。これは七元徳の中の信仰の姿そのものと言えるでしょう。神(愛)に自分のすべてを捧げることができる者こそ、神であるという真実を彼は体現しているのです。
逆さに吊るされるという自己犠牲によって彼の自我はやがて死滅してしまうでしょう。しかし自我が死滅した後に残るのは彼の神性さです。彼はそのことを知っているのです。
人は逆転の発想によって悟りに至ります。物事に行き詰まった時、今までのやり方や信念を通すのではなく、全く異なる視点から現実を見直してみることによって状況を変えることができるということをこのカードは示しています。
◆ペアカード
第4番 皇帝と第21番 世界:同じ足の形
他の元徳を示すカード